ふるさと納税業界の動向は?市場規模や人気自治体・返礼品などを解説

総務省や各ふるさと納税ポータルサイトが公表している情報をもとに、ふるさと納税業界の動向に関する最新データをお届けします。年々市場規模や受け入れ額が増加し、人気の自治体や返礼品のジャンルがある一方で、ふるさと納税によって他自治体へ税収を奪われる自治体もあります。また、実際に寄付された税金の使い道なども気になりますよね。この記事では、それらを全て解説します!

ふるさと納税 受入金額で見る市場規模


画像出典:ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課

ふるさと納税制度が創設されたのは、2008年です。総務省が最新データを発表している2020年まで(2022年2月時点)の間、ふるさと納税の受入額と受入件数は上の図の通り、右肩上がりの成長を遂げてきました。

この右肩上がりのカーブには、以下のような出来事が寄与していると思われます。

 

ふるさと納税制度における主な出来事
2012年9月 初のふるさと納税ポータルサイ ト「ふるさとチョイス」開設
2015年1月 税制改正によるふるさと納税制度の拡充

ふるさと納税ブーム到来

2015~2019年 総務省による規制と指定制度の施行
2020年 コロナ禍の「巣ごもり需要」で受入額・件数が過去最高に

2008年から2012年頃の初期、ふるさと納税制度はなかなか普及しませんでした。

認知度が低かったことも理由の一つです。また、寄付額のうち、住民税や所得税から控除されない「自己負担額」は現在は2,000円ですが、当時は5,000円と高額でした。

控除を受けるために、現在は条件を満たせば確定申告より簡単な「ワンストップ特例制度」を使えますが、当時は一律に確定申告が必要だったことなど、寄付者の負担が大きかったことも一因でした。


さらに、現在はほとんどの自治体が返礼品を提供していますが、当時は大阪府泉佐野市などの一部の自治体だけが返礼品を送っていました。

2012年:初のふるさと納税ポータルサイ ト「ふるさとチョイス」開設

受け入れ額と件数は、2013年度から成長し始めます。これには、2012年9月に初のふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」が開設されたことが関係していると思われます。

当初は、返礼品情報をまとめたウェブサイトでした。しかし2013年には申込フォームが設置され、クレジットカード決済も可能に。ウェブ上での寄付手続きが容易になり、制度の普及に大きく貢献したといわれています。

2015年:ふるさと納税制度の拡充/ふるさと納税ブーム到来

ふるさと納税の寄付額のうち、住民税や所得税から控除される額には、年収や家族構成などにより上限額が設定されています。この「控除上限額」が税制改革により、2015年1月1日以降は約2倍に拡充。ふるさと納税のお得感が、一気に増しました。また、「ワンストップ特例制度」も創設されました。

ふるさと納税枠を2倍に拡充した制度改正

画像出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」ふるさと納税枠を2倍に拡充した制度改正



2014年に「ふるなび」「さとふる」、2015年には「楽天ふるさと納税」と、現在は主要ふるさと納税ポータルサイトとなっているサイト群が開設されたのもこの時期です。

ふるさと納税ポータルサイト比較

これらのポータルサイトの活躍や、魅力的な返礼品を揃え、積極的に情報発信する自治体の取り組みなどの結果、受け入れ金額は、2014年度の約388億円から2015年度は約1,652億円へと、一気に約4倍に跳ね上がりました。

2015~2019年:総務省による規制と指定制度の施行

2019年には、それまで成長し続けていた受け入れ額がいったん、落ち込みを見せます。理由としてはこの年施行された、ふるさと納税の「指定制度」の影響が考えられます。

指定制度とは、総務大臣が、基準に適合した地方団体を「ふるさと納税制度の対象」として指定するという制度です。これにより、大阪府泉佐野市はじめ計4自治体が「不指定」となりました。


指定制度が施行された背景には、自治体間の過熱する返礼品競争がありました。総務省は2015年から再三にわたり通知を発出して「返礼品は寄付金額の3割までに抑えること」などの要請を行ってきましたが、依然として高還元率の返礼品などが提供されていた実態があったためです。

指定制度施行により、総務省の規定に従わなければ実際にふるさと納税制度から除外されてしまうことになったため、高還元率の返礼品や金券類などの返礼品提供を停止する自治体が続出。このことが、受入額に影響したとみられます。


ちなみに泉佐野市は、不指定を不服として裁判で争い、2020年6月の最高裁判所の判決で総務省の不指定決定は「違法」として取り消されました。翌月、泉佐野市はふるさと納税制度に復帰。現在は規定を守って寄付を受け付けています。

2020年:コロナ禍の「巣ごもり需要」で過去最高に

2020年度は、受け入れ額・受け入れ件数ともに過去最高の約6,700億円と約3,500万件を記録しました。

背景には、新型コロナウイルス感染拡大の影響で旅行やレジャーの機会が減り、自宅での食事を楽しむ人が増えたと考えられます。また、さまざまな地域の特産品を取り寄せて、少しでも旅情を味わいたい心情も反映しているかもしれません。

ふるさと納税 都道府県別の受入金額・受入件数

ふるさと納税に関する現況調査結果
画像:「ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課」※を参考にふるさと納税ナビ編集部で作成

受け入れ件数が100万件を超える都道府県は九州地方に多く、そのほかの地方では1地方に1都道府県程度と、分散していることがわかります。

ふるさと納税 受入金額の多い都道府県TOP10

ふるさと納税に関する現況調査結果
画像:「ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課」※を参考にふるさと納税ナビ編集部で作成

ふるさと納税では俗に「三種の神器」と呼ばれる返礼品があります。人気返礼品を指す言葉で、「肉」「カニ」「米」がこれにあたります。また、「果物」も根強い人気があります。

上位にランクインしている都道府県は、いずれもこの4種類の地場産品で有名な地域。特に北海道は、自治体数が多いことも受け入れ金額を押し上げている一因ですが、カニやお肉などの返礼品の人気の高さがうかがえます。

また、3位の宮崎県と4位の福岡県の受け入れ金額の差はわずか5,100万円ですが、受け入れ件数は、逆に4位の福岡県の方が66万件以上も多くなっています。宮崎県へは、高額の寄付が多いことが分かります。

ふるさと納税 人気の自治体(市区町村)TOP10

ふるさと納税に関する現況調査
画像:「ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課」※を参考にふるさと納税ナビ編集部で作成

宮崎県都城市は、宮崎牛や数々のブランド豚、霧島酒造などの焼酎の返礼品が豊富。特に肉類は、コスパ抜群の大容量の返礼品が多いのも人気の理由です。


2位の北海道紋別市は、流氷で有名な都市。天然の良港として知られ、美味しいほたてやカニなどの返礼品が人気です。


3位の北海道根室市は三方を海に囲まれた都市で、根室港は道内でも水揚げ量が多い港の1つ。このため海産物の返礼品が豊富で、ほたていくらなどが人気を博しています。

ふるさと納税 人気返礼品ジャンル(2021年)

2021年に人気を博した返礼品は、どのようなものだったのでしょうか?ふるさと納税ポータルサイトが発表しているデータから見てみましょう。

さとふる人気返礼品ランキング(2021年)

さとふる人気返礼品ランキング(2021年)

寄付金額は、10,000円前後が多いことがわかります。

上位10品はどれも食品で、過半数を肉類が占め、そのうち3品は「ハンバーグ」となっています。忙しい時でも簡単に調理でき、お子さんでも食べやすいことなどが人気の理由なのかもしれません。

「ふるさとプレミアム」の2021年人気返礼品ランキング

一方、「ふるさとプレミアム」が発表している2021年(対象期間:1月1日~11月30日)の人気返礼品ランキング上位10位は、以下です。

ふるさとプレミアム返礼品人気ランキング(2021年)

ふるさとプレミアム返礼品人気ランキング(2021年)

寄付金額は、やはり10,000円前後がほとんど。こちらも上位10品全てが食品ですが、内訳は海産物5品、肉類4品、果物1品と、さとふるの場合よりもバラエティーに富んでいます。

これらの傾向の違いは、ふるさと納税ポータルサイトにより提携している自治体数や返礼品の内容、力を入れている返礼品ジャンルなどが異なるためだと思われます。

ふるさと納税による税金控除規模と控除額の大きい自治体

ふるさと納税では、寄付額の2,000円を除く原則として全額が、所得税や住民税から控除されます。


このため寄付者の居住地である自治体では、本来その自治体の収入となるはずだった住民税の税収額が減少することになります。

ふるさと納税の市場規模拡大と比例して、各自治体からのふるさと納税による税収の流出額も増えています。以下は、ふるさと納税による住民税控除額と、控除が適用された人数の推移を示す図です。

ふるさと納税に係る住民税控除額及び控除適用者数の推移(全国計)

画像出典:
ふるさと納税に係る住民税控除額及び控除適用者数の推移(全国計)|ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課

2021年度の課税において、ふるさと納税による控除適用者の数は552.4万人。これは前年度比で約1.3倍となっています。また、住民税控除額の実績は約4,311億円で、前年度比約1.2倍という結果が出ています。

参考リンク:「ふるさと納税に関する現況調査」を公表(総務省)
https://www.jcci.or.jp/news/trend-box/2021/0812171908.html

ふるさと納税による控除額の多い自治体

2021年度において、市町村民税の控除額が多かった上位の20自治体は以下です。

令和3年度課税における市町村民税控除額の多い20団体

画像出典:
(参考)令和3年度課税における市町村民税控除額の多い20団体|ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課

上位20自治体のうち、8自治体が東京都の自治体です。そして残りの都市は全て政令指定都市であり、特に都市部で税収減が顕著であることがわかります。

参考リンク:
その「ふるさと納税」、もう少し考えてみませんか?(東京都中野区)
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/102500/d029745.html

ちなみにふるさと納税では、自分が住む自治体に寄付することも可能です。ただし総務省の規定により、この場合は返礼品がもらえません。

それでも居住地の自治体に寄付するメリットとしては、「寄付金の使い道を指定できること」が挙げられます。使い道については、次の章で詳しく解説します。

都市部自治体のふるさと納税への取り組み

ふるさと納税への取り組みを強化することで、税収の流出額を上回る額の受け入れを達成した自治体もあります。

例えば京都市では、返礼品の充実やプロモーションの強化などにより、2021年度の寄付受け入れ額は過去最高の52.3億円を記録。税控除額49.8億円を上回る結果となりました。


東京都墨田区なども、江戸時代からの伝統工芸品や東京スカイツリーのある立地などを生かして魅力的な返礼品を展開しています。

ふるさと納税の寄付の使い道

ふるさと納税寄付金の使い道(兵庫県明石市)

出典画像:楽天ふるさと納税「兵庫県明石市自治体概要」

ふるさと納税では、大多数の自治体において、寄付者が寄付金の使い道を指定できます。総務省の統計では、指定できる自治体は1,736自治体で、これは全体の97.1%に相当します。

使い道をどの程度具体的に選べるかについては、自治体により異なります。総務省の統計では449自治体、全体の25.1%で具体的な事業を選べます。それ以外の自治体では、大まかな分野を選べるようになっています。

参考:ふるさと納税を募集する際の使途の選択|ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|自治税務局市町村税課
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20210730.pdf#page=5

新しいふるさと納税の形「クラウドファンディング型ふるさと納税」

寄付金の使い道が選べるふるさと納税の一つの形が、「クラウドファンディング型ふるさと納税」です

自治体や、自治体が認めた個人や団体が「プロジェクト実行者」となって、通常のクラウドファンディングのように「プロジェクト」(寄付金の使い道)を示し、ふるさと納税制度を通じて寄付金を募集します。

通常のふるさと納税と同じく税控除も受けられ、地域の課題解決策や災害支援に貢献できることから、近年人気を集めています。

ふるさと納税寄付金の使い道の具体例

寄付金の使い道を具体的に示している自治体には、以下のような例があります。

ふるさとチョイス:命を守る「災害救助犬」「セラピードッグ」を育てる(徳島県)

命を守る「災害救助犬」「セラピードッグ」を育てる(徳島県)ふるさとチョイス

徳島県への寄付の使い道の一つに「災害救助犬やセラピードッグの育成事業」があります。県は、動物愛護管理センターに収容されている犬を訓練し、災害救助犬や、避難所や病院などを訪問して人の心のケアを行う「セラピー犬」などを育成する事業を行っています。

ふるさと納税の寄付金はこれらの犬のトレーニング費用のほか、譲渡施設「きずなの里」の運営などにも使われています。

ふるさとチョイス:ふるさとの高校·特別支援学校で学ぶ後輩を応援!【お礼の品:福井県ふるさとパスポート】

ふるさとチョイス:ふるさとの高校·特別支援学校で学ぶ後輩を応援!【お礼の品:福井県ふるさとパスポート】ふるさとチョイス
寄付金が、福井県内の高校や特別支援学校での物品購入や、スポーツ・文化関連行事に活用されます。また、将来の福井を担う人材育成のための奨学金制度「きぼう応援奨学金」にも使われます。

寄付金はこれまで、講堂へのスクリーン設置やスポーツ用具等の購入、海外研修の実施などに使われてきました。また、2015年度から毎年20名の生徒に「きぼう応援奨学金」が給付されています。

さのちょく:「大阪湾しらす」の美味しさ発信プロジェクト

さのちょく:「大阪湾しらす」の美味しさ発信プロジェクトさのちょく
泉佐野市独自のクラウドファンディング型ふるさと納税事業「#ふるさと納税3.0」のプロジェクトの一つです。

泉佐野市は「地場産品に乏しい」という不利な点を補うために、過去には高還元率の返礼品などを提供していました。しかしこのことが原因でふるさと納税制度から「不指定」となってしまった過去の教訓を生かし、地場産品の乏しさを補うために、クラウドファンディングを通じて地場産品を開発する事業「#ふるさと納税3.0」を実施しています。

プロジェクトの目的は、しらす加工場の設立です。日本で3番目の漁獲高を誇る大阪湾のしらすを返礼品として開発し、加工場が、大阪湾で獲れる「しらす」についての情報発信基地となることも想定しています。

まとめ

ふるさと納税制度が誕生して、約13年。その人気は右肩上がりで、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」にも後押しされて、寄付受入れ額は過去最高を記録しました。

一方で、本来、寄付者の居住地の自治体に入るはずだった税収が他の自治体へ流出してしまう問題も指摘されています。しかし、情報発信や返礼品の充実などの取り組みにより、流出額を上回る額の受け入れを達成した自治体もあります。

寄付金の使い道を指定できる自治体も多く、ふるさと納税は私たちにとって、税の仕組みや地方創生などについて考える機会ともなります。魅力的な返礼品や自治体を見つけて、ぜひ応援してみてください。



参考サイト:
ふるさと納税に関する現況調査結果 (令和3年度実施)|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20210730.pdf
ふるさと納税の本来の役割とは? |泉佐野市
https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/71/syucyou20190517.pdf